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ベジタリアニズム (vegetarianism) とは、健康、道徳、宗教等の理由から動物性食品を排する主義・思想のことである。幾つかの公式な団体(後述・ベジタリアンの分類参照)では、菜食を中心とした食事を実践する人々の総称がベジタリアンと定義されている。菜食だけ、菜食でも球根などの排除の有無や、卵と乳製品を摂ることの有無などに応じて様々な分類がある。 日本ではベジタリアンが正しく理解されず、明治時代に菜食主義と訳されたが、動物性食品でも一部については摂取の是非が問われないので、菜食主義という語訳は正確ではない。しかし訂正されることなく、今日に至っても「ベジタリアン=菜食主義」として広まり続けている。
概要アメリカ栄養士学会の定義によると『ベジタリアンとは、動物性食品を避け、穀物、豆類、種実類、野菜、果物を中心に摂る人』である。ベジタリアンは摂る食物により名称と定義がなされている(ベジタリアンの分類)。 国によってはベジタリアニズムはポピュラーな選択肢である。インドでは国民の31%がベジタリアンである[1]。 その他にアジアでは台湾が10%。欧州のイギリスで2000年の調査では、国民の9%がベジタリアンである。同年の調査でカナダでは成人の約4%がベジタリアンである。[要出典] しかし、これらは合衆国の2000年の調査で、成人の約2.5%が肉類や魚類を一切摂らないベジタリアンというが統計があるが、2.5%の内、9.4%をラテン系が占めているという誤統計が考えられる内容も加わっている例などがあり、正確性は不明である[14]。 名称元々ベジタリアンという言葉は、1847年9月30日の英国ベジタリアン協会[2]の設立の際にラテン語 Vegetus(活気のある、生命力にあふれた)をもとに英語の野菜 (Vegetable) の単語とかけて作られた言葉である[3]。それだけでなく、禁酒も含んだ食生活全般の節制を指した。当初は、この活力ということが強調され倫理的側面を持っていなかった。後にベジタリアン協会は、動物実験や動物を殺傷して生産される絹や革製品に反対するなど、社会全般の改革運動を奨励するようになる [4]。日本では明治時代に菜食主義と訳された。 紀元前のギリシャではオルペウス教の輪廻思想によって、動物と人間は同等である為に菜食を実践した。当時、菜食主義者は古代ギリシャの哲学者で菜食主義者であったピュタゴラスにちなんで、ピュタゴリアンと呼ばれていたが[5]、野菜のベジタブルと語呂の良いベジタリアンがこれに取って代わることになった。 精進料理は倫理的な戒律を守るという意味が元である。 ベジタリアンの分類ベジタリアン発祥の地である英国の、世界で最も歴史ある菜食団体であるベジタリアン・ソサエティーや、国際ベジタリアン連合、日本ベジタリアン協会は、ベジタリアンを菜食だけ、または菜食に加えて本人の選択により卵と乳製品を摂る人々をベジタリアンと定義し、動物肉(肉、鳥、魚・甲殻類)、などを食べる人々をベジタリアンとしていない。 また、マクロビオティックがベジタリアンに近いと間違われることがある。ベジタリアンは動物を食べない一方で、マクロビオティックは原則として、「身土不二の原則」「一物全体の原則」とする思想が根本にある為に、土地の国内生産・伝統であれば肉食も認め、人の手で捕れる程度の魚介・小魚が推奨される等、ベジタリアン・ベジタリアニズムとは違ったものである。 [6] [7] [8]
世界で最も歴史ある菜食団体である英国ベジタリアン・ソサエティーや、国際ベジタリアン連合によると、ベジタリアンは、鳥獣の肉、卵、魚介類及びそれらの副生成物(ラード、ヘット、ゼラチン、肉エキス、鰹節・鰯・エビ等の出汁、魚を殺傷して得た魚卵等を含む)が含まれるものを口にしない人々と定義されている[9][10]。 またベジタリアンの中には食物の選択にとどまらず、開発に動物実験を要した薬品や化粧品などの使用を避け、動物を殺傷して得られた製品(皮革製品・シルク・ウール・真珠・珊瑚等)を身につけないといった習慣を選び、動物の搾取を極力避ける者もいる。 下記は、国際ベジタリアン連合や日本ベジタリアン協会が定義するベジタリアンの分類である[10][11]。
またベジタリアンの要素は満たしているものの、国際ベジタリアン連合が紛らわしい用語としているものにフルータリアンがある。
下記は、国際ベジタリアン連合では、ベジタリアンではない定義を混乱させる用語として[12]、ベジタリアンではない人々をスード・ベジタリアン(Pseudo-vegetarian:擬似ベジタリアン)と定義している[13]。 国際ベジタリアン連合(日本語版)では、紛らわしい用語として説明されている[14]。 ベジタリアン発祥の地であり、世界で最も歴史ある菜食団体である英国ベジタリアン・ソサエティーや、国際ベジタリアン連合、日本ベジタリアン協会がベジタリアンと定義しない人々(動物・肉、鳥、魚・甲殻類などを食べる)のグループである。 [15] [16]
インド料理の多くはベジタリアン(特にラクト・ベジタリアン)用に作られている。また仏教文化から発達した精進料理もベジタリアン料理の一種である。台湾等では素食(「粗食」ではない)と呼ばれる。ちなみに精進料理でニンニク、タマネギなどを使わないのは、俗にそれらが「精をつけ情欲を増大させる」ためと説明されることがあるが、本来の意義とは違う。そうした球根類は植物の「肉体」であり、動物の場合と同様に損なうことが避けられるからである。この考えによれば、植物の枝葉や根は動物の体毛や爪にあたるもの、ということになる。切られてもまた生えてくるので、食べても構わないとされる。加えて完全な菜食を続けると、人によっては刺激が強く、そのような物を受け付けない体質に変化することがあるのも理由に挙げられる。アジアン・ベジタリアン (Asian-vegetarian) と呼ばれる、主に仏教系の影響のあるベジタリアンの場合には、野菜の中でも五葷は一般に食べない[17]。 宗教改革以前からあるキリスト教の教派には、金曜日などの特定の曜日・四旬節・待降節にベジタリアン的な料理を作り、断食を守る伝統がある。これを小斎・斎(ものいみ)などと呼ぶ。もっとも厳しい節制においては、カトリックでは肉、卵、乳製品が禁じられており、正教会では更に魚肉、オリーブ油(または植物油全般)も禁じられる。しかし、肉では無く魚介であるという解釈のもとにベネズエラではカピバラ、アイルランドではカオジロガンなど水辺の鳥獣を食べてもよいとする例はあった(例として中世料理を参照)。またカトリックにおいては20世紀後半から、この趣の節制は大幅に緩和された。節制の時期等に関しては、其々の教派の項目及び教会暦を参照のこと。 動機ベジタリアニズムは以下のような動機によって選択される。 肉食を否定する主張には大きく2種類あり、過剰な肉の摂取を戒める主張と肉食そのものを否定する主張がある。この2つを混同している傾向も見られ、これが議論をより混乱させる要素となっている。健康のためと称しながらも、突き詰めれば別の理由に立脚している場合もある。ベジタリアニズムが単純な理由に拠らない活動であることにも絡んで、その各々の信奉者・実践者によって主張・様式もまちまちである。 宗教・思想インドは殺生戒(アヒンサー)思想の発祥地であり、遅くとも2千年以上前から菜食を奨励する宗派が存在した。インドの不殺生における間接殺の回避は、ジャイナ教のように耕す際に虫が死ぬ農業や火中に虫が飛んで入ることを回避するため火をたいて料理することも拒否することに加え、植物の殺生を避けるため球根類の野菜を食べることも回避するなど、肉食だけを避けるというものではない。 現在インド発祥の宗教で、一般に言う菜食主義を奨励しているのは、肉食は避けるが乳製品はよしとするヒンドゥー教、動物・植物の殺生だけでなく無生物の破壊も含めてできるだけ回避するように努めるジャイナ教が代表的である。 一方で仏教では、自らの手で殺生をすることは禁じられているが、上座部とチベット仏教では肉食は禁じられていない。一方で中国仏教では肉食が禁じられている。インドで最近発見された経典や北伝の初期仏教経典(阿含経)や南伝のパーリ経典によれば、釈迦は直接殺を禁じ菜食主義を戒に含めることを明確に拒否する記述があるだけではなく、肉を食べたことが記されている。さらに釈迦に食事を振舞うために在家信者が肉を召使に買いに行かせた記述もある。よって肉食は不殺生戒を破ることにならない。ただし肉が比丘尼のためにわざわざ殺されたことを見・聞・知した場合はこの肉を食してはならないと宣言している。(三種の浄肉)さらに在家には肉・人(奴隷)・毒・武器にかかわる職業に就いてはならないと宣言している。ただし幾つかの病気の治療に肉をあげる記述も存在する。一見すると矛盾する用であるがこれには当時の他宗との間接殺に解釈の相違に起因するとされている。当時に既に存在したジャイナ教はたとえば農業においても耕作すれば土中の生物の殺生を避けることができないため信者は農業に従事することが禁止されていた。この世に存在する限り間接殺は避けられないものであるため、ジャイナ教の僧は最終行として食を断ち、餓死する。一方で中道を掲げ極端な苦行を非難した仏教は、直接殺を避けるとともに貪ることに戒め全体的に間接殺を減らすのが第一であるとされている[18]。 一方、北伝の大乗仏教の経典では釈迦が肉食をしたとの記述はないが、肉食が不殺生戒を破ると主張をする経典も存在しない[19]。しかし、すべての生き物に対する慈愛に基づいて肉食を避けるく菩薩の道が強調されており、この論法で肉食を避けることの重要性を強調する記述が何度も見られる。この考えに則った大乗の菜食はジャイナ教徒の食事と似ており、肉食だけでなく植物殺を生じる球根野菜の使用を避ける。ただしジャイナ教の僧侶のように、最終的に微生物の殺生をも避けるために水を取ることさえ拒否し入滅するようなことはない。中国仏教においては南伝の経典も大まかに正統としながらも大乗経典と食い違う部分は小乗の劣った教えとして認めない場合が多く、より厳格な菜食主義が主張される。日本仏教ではすでに鎌倉仏教が厳格な菜食主義を放棄している一方で、精進料理の伝統も続けられている。ただし僧の托鉢による受動的な肉食と在家の購買による能動的な肉食は異なるとして托鉢以外の場合は菜食を奨励している場合もある。チベット仏教は大乗の経典・教義を受け継いでいおり精進料理のような料理もあるが、インドの大乗後期に現れた密教の秘儀により菜食は不要としている。 学術に基づく近代文献学が発達していることもあり釈迦の肉食は事実とされている。 宗教において菜食主義の傾向が強い要素の中には、肉体より精神を至高のものとする禁欲主義の影響が大きいと考えられるものもある。これは霊・精神性に対し、肉食や生殖欲が肉体性を象徴するとして罪悪視されたもの(マニ教、カタリ派、キリスト教ベジタリアニズムなど)もあるが、断食のように修行の一環として菜食主義的粗食を志向し、なかには即身仏のように自発的殉教死に至るものもあった。 現代西洋のニューエイジ的潮流から発したベジタリアニズムも、それら伝統的宗教思想の影響を少なからず受け継いでいると言っていいだろう。また、動物にも一定の権利を認めるべきだとの主張をする活動家および思想家も存在する。オーストラリアの哲学者ピーター・シンガーのように倫理学説上の理由から菜食主義をとるものもいる(彼の場合は功利主義の立場から脊椎動物のみ食べないという限定的な菜食主義)。また欧米では動物にも人と同等の権利があるべきだとの主張をする集団も存在するが、その主張中に於いても伝統的ベジタリアニズムや宗教思想への関連性を見出すことが可能である(動物の権利・後述)。 奨励する宗教・宗派
健康
バルセロナの果物市場
宗教・思想上のみではなく、健康上の理由から肉食を避ける者もある。前述したベジタリアン協会の主張する立場に立てば、ベジタリアンの本義は「健康で活力のある人」であり、「そうなるために肉食を避ける者」であるとされている。 2003年には、アメリカとカナダの栄養士会は合同で牛乳や卵も摂取しない完全な菜食においても栄養が摂取でき、また菜食者はがん、糖尿病、肥満、高血圧、心臓病といった主要な死因に関わるような生活習慣病や認知症のリスクが減ると報告されている[20]。ただし、完全な菜食におけるリスクの詳説がされていない。6つの前向きコホート研究をメタアナリシスし、20年以上の菜食者は平均余命が3.6年長いと報告された[21]。2007年の世界がん研究基金の報告では、さまざまな種類のベジタリアンはがんの発症を少なくさせると報告している[22]。 1983から1990年にかけて行われた「中国プロジェクト」[23]は、アメリカ国立癌研究所とアメリカがん研究協会も資金提供し、アメリカのコーネル大学、イギリスのオックスフォード大学、中国のがん研究機関やほかのいくつかの国の研究機関が関与した科学研究である。中国プロジェクトを指揮した、コリン・キャンベルは、研究結果を受けてもっとも安全な食事は完全菜食であると述べ完全菜食になり、5人の子供も完全菜食で育てた[24]。中国プロジェクトでは、乳製品をまったく摂取しないが骨粗鬆症は非常に珍しいということや、鉄分は植物から摂取されており、鉄欠乏性貧血は肉の摂取と関係ないことを示した[25]。 コリン・キャンベルはコーネル大学でベジタリアンの栄養学を教えているが、1980年代以降、菜食に関する科学的な研究が蓄積されているのに肉と乳製品の摂取が必要だという視点を変えようとしない、今では科学的な研究の結果があるのに教育を受けた時代の常識を信じ込んでしまっていると指摘している[26]。 以上を支持する意見として、以下のようなものが挙げられる。
アンモニアは大豆より肉のほうが多く作るということは医学的に分かっているので、肝臓障害の場合に肉の摂取が制限されることがある[27]。 これら肉を摂ることが害になるような説明が記述・引用されることがあるが、これらは一般人を対象にしたものではない。 同様に、弁膜症治療などの治療でワーファリンを使用している人などの場合に、植物は薬効を阻害するものが大いことが医学的に分かっているので、ワーファリン使用者の場合に納豆摂取を禁止されたり食黄色野菜の摂取が制限されることがある[15]。 同様に、日本人の10%が経験するといわれる結石の原因であるシュウ酸は植物に多く、シュウ酸の摂り過ぎが結石のリスクが高くなることは医学的に分かっているので、シュウ酸値が高い場合にはホウレンソウ、キャベツ、タケノコ、ナッツ頬などの摂取が制限されることがある[16]。 また野菜ばかり食生活ではシュウ酸の取り過ぎにつながることから、野菜は1食1皿を目安にすると良いという意見もある[17]。 これらのように、特定の病気などを対象にした場合に注意が必要な食材は肉や野菜に限らず存在し、だからといって肉が悪いわけではないので、フードファディズムや菜食原理主義者の主張には注意が必要である。 例として米国における牛肉や鶏肉の過剰な摂取量と全国民の約1/2以上が肥満であることの関係を挙げられる場合があるが、米国の2~18歳の子供6500人を対象にした調査で最も多く食べている「野菜」はフライドポテトであり、摂取する野菜の約4分の1がフライドポテトであることや[18]、18歳以上の成人1000人を対象の調査で、米国人の最も好きな野菜として、回答者最多の26%がジャガイモをもっとも好きな野菜として挙げ、米農務省は健康のために1日に5皿の野菜を食べることを推奨しているが、米国人の98%がこの基準をジャガイモを食べることで満たしている[19]、という米国における過剰なカロリー摂食などの背景を考慮しないものであり、単純に食文化が違う諸国に当てはめられない。 これらに対しては、肥満はカロリーの過剰摂取こそが問題で、植物性油脂で揚げたフライドポテトのような食品でも、過剰摂取すれば問題であるとの指摘もあり、米国では児童の肥満対策に学校給食(カフェテリア方式)やディズニーランドなど遊園地のレストランから、砂糖を含んだ清涼飲料水と共にフライドポテトが排除される動きが報じられている。なおこれら児童向け肥満対策では、低カロリーであることや、未精製の全粒穀物による高炭水化物のような自然食が主な方向性となっており、必ずしも「菜食」を重視しているわけではない。 健康被害の可能性イギリス栄養財団は、子どもの鉄分不足による体の不調や、知能指数(IQ)の低下の原因として、親がベジタリアンであることなどが影響している[28]。 菜食者18名を対象とした研究において、菜食者の44%がタンパク質必要量を摂取しておらず、エネルギー、その他の栄養素が顕著に低い[29]。なお、国民栄養調査における同年代のタンパク質平均充足率は不足していない[30]。 インドで外来患者4680人を対象にした5年間にわたる調査において、ビタミンB12レベルが低い患者の大半がベジタリアンであり、ベジタリアンが心疾患や脳梗塞 など発症するリスクは非ベジタリアンの約4倍である[31][32][33]。医師は、「非ベジタリアン食を推奨しているわけではない。しかしこれは研究結果であり、ベジタリアンである人々はビタミンB12サプリメントを飲む必要がある」とコメントしている[34]。 オーストラリアとベトナムが2700人を対象にした調査では、ベジタリアンの骨密度は、肉食者に比べて平均で5%低い[35]。ただし、ガーバン医学研究所のトゥアン・グエン氏は、「骨密度と骨折リスクの関係は不明」としながらも、「欧米のベジタリアン人口は全人口の約5%を占め、その数は増え続けている。また、骨粗しょう症患者の数も世界的に増加傾向にあり、調査結果は考慮に値する」というコメントや、「厳格な菜食主義であるビーガンのほうが骨密度が低いが骨折率は高いわけではなく、健康を意識している傾向があ。また全体的にみればベジタリアンは長生きで、高血圧と心臓病リスクが低い傾向がある」とコメントしている[36]。 オックスフォード大学が61歳から87歳の107人に対して行った研究によると、ビタミンB12濃度が最も低い群は脳収縮を引き起こす可能性が6倍高いと報告されているが、菜食者を対象とした研究であるかは詳説されていない[37]。 278人の女性を対象とした研究で、受胎前後の血中ビタミンB12濃度が低い女性から産まれる子どもの神経管欠損リスクは5倍であったため、トリニティ・カレッジ (ダブリン大学) とイタリアの医学研究委員会(Health Research Board)研究者は「ビタミンB12は動物由来のために女性の菜食主義者は危険性が高くなる可能性がある」とコメントしている[38]。 なお、完全菜食では、人体に欠かせない鉄分、亜鉛、ω-3,6系不飽和脂肪酸、ビタミンB12などが不足しがちである。完全菜食の場合、人工的なサプリメントや添加食品で摂取しなければならない栄養素もある。これには、完全菜食を諦め、魚貝類や無精卵、乳製品を摂取するという方法もある。 文部科学省の発行する五訂増補日本食品標準成分表では海苔類はビタミンB12を含有する[39]。しかし、五訂増補日本食品標準成分表に掲載されている海苔のビタミンB12含有量は、近年の主流となってきた化学発光免疫測定法に基づく自動分析法ではなく、測定精度が低く、なおかつ熟練を要する微生物法により測定された値である[20]。ただし、市販の複数の藻類のビタミンB12含有量を微生物法と化学発光法で測定した結果、スジアオノリとスサビノリが多量に含有するビタミンB12のほとんどが生理的に有効なOH-B12であり、ビタミンB12欠乏ラットを用いた実験ではこれらの海苔がビタミンB12供給源として有効であると報告されている[40]。 いずれも乾燥状態のスジアオノリ、スサビノリ、クロレラに含まれるビタミンB12は生理的に有効なビタミンB12であり、スサビノリから単離したビタミンB12をビタミンB12欠乏ラットを投与したところ供給源として有効と報告されている[41]。 植物性の海苔を菜食者のビタミンB12の供給源と考える研究がある。 2002年に複数の文献を検査した海外の報告によれば、生海苔を乾燥させた乾燥海苔はビタミンB12の供給源にならないという報告や、海苔を摂取することで体内ビタミンB12状態を悪化させるかもしれないと結論された研究も存在しており、テンペ、生海苔、円石藻類のみがビタミンB12源として確実な摂取源であるかさらに研究されるべきであるとする報告もある[42][43]。日本の研究者は、海外では藻類を食する文化がないため、適切でない乾燥方法を用いた藻類のビタミンB12が生理的に不活性になることがあるという報告があると指摘している[41]。 2003年には生後より厳格な玄米菜食をしている小中高生の菜食者6名(男4名、女2名)を対象にした研究において、1日あたり海苔を0~2グラム摂取していた2名は、体内ビタミンB12の減少を示す尿中メチルマロン酸の上昇を示したものの、1日あたり海苔を4グラム以上摂取していた4名は尿中メチルマロン酸の上昇を示さなかったことから、海苔を毎日4グラム以上摂取することで、ビタミンB12の供給源になることが示唆され、完全菜食であっても血中ビタミンB12値を正常範囲に維持することは可能でありそのためには海苔の摂取が不可欠と報告されている[44]。同じ研究者が1995年にも、厳格な玄米菜食の菜食歴4~10年の7~14歳の子供6名を対象とした研究において、1日あたり2~4gの海苔を摂取した場合、コントロール群とビタミンB12値などに有意差がないために、厳格な玄米菜食を行う子供でも海苔を食べることによってビタミンB12の欠乏を防ぐことができると報告している[45]。 植物からの供給源として示唆されているものは、ほかに特殊な手法によりビタミンB12を含有させたカイワレ大根があり、販売されている。[46] 詳細は「シアノコバラミン」を参照 環境保護・動物の権利・人道主義ベジタリアンには、動物保護および健康増進という考え方以外に、エコロジーを主な根拠としている人もいる。
1970年代に、フランシス・ムーア・ラッペが、タンパク質を得るためには畜産は非常に効率が悪いことを暴いた[48]。
2006年、国際連合食糧農業機関(FAO)は畜産が環境破壊への主な脅威であるという報告をしている[49]。2008年1月、自身がベジタリアンでもある気候変動に関する政府間パネル(IPCC)のラジェンドラ・パチャウリ議長は、肉は生産過程で二酸化炭素を大量に排出し輸送でもエネルギーを使用するので、肉の消費を減らすことは個人ができる温暖化対策の一つであると述べた[50]。またウシなどの反芻動物は消化の際にCO2の20倍以上の温室効果を持つメタンガスを大量に排出している、という説があるが、実際には農業排出区分から水田だけを対象にした米国環境保護庁(EPA)の報告書で、水田(稲作)のメタン放出量は年間6000万トンから1億7000万トンであり、家畜からのメタン発生量は年間6500万トンから8500万トンと推定される[23]。 なお、ウシなどの反芻動物は消化の際に排出されるメタンガスの年間排出量は、国内の温室効果ガスの年間排出量(二酸化炭素換算)の約0.5%ほどの微量である[24]。 日本での畜産も、資源の浪費や環境危機といった側面を持っている、大量の輸入飼料を必要とする畜産物の消費量が増えたことは食料自給率の低下の要因の一つとなっている[47]。日本での食料自給率の低下は、海外で枯渇が懸念される地下水を使うことにつながり、[51]、フードマイレージ(食料の輸送距離)を増加させ輸送のためのエネルギー消費を増大させている。 これらに対しては、肉食そのものよりもむしろ現代の食料生産および分配のシステムに問題があるという観点から、以下のような批判も呈されている。
1970年代に、ピーター・シンガーは『動物の解放』[52]において、畜産は動物の数において動物虐待が行われている数が多いと主張した。工業化されすぎた畜産のシステムは、省スペースで高効率を求めるため、過密状態での飼育、病気の放置、豚の尾や鶏のクチバシの切断が行われる。 殺す際にも欧州などでは安楽処置される場合もあるが、一般的には安楽処置がされているわけではなく、必要以上に残虐である。また感染症予防の抗生物質などの使用が耐性菌進化のリスクを伴うなど、健康に影響しないとは言いきれない。 なお上に挙げた菜食推進のエコロジー的論拠以外にも「動物の権利」運動の延長で、家畜を殺傷することに対する忌避感もあり、この種の「視点と価値観」による議論や論争は様々なところに見出され、これには種差別の概念も絡んで更に複雑である。なお農作物の収穫に影響を与える昆虫(害虫や益虫)とそれら昆虫に影響される生態系など、畜産を含む農業・農薬の影響を被るであろう生物群・環境に関する議論もエコロジー推進派内外に見られ、こういった問題が菜食主義やベジタリアニズムおよびエコロジーのみに収斂できない面があるため、単純ではない。 これらの思想の根底には、環境倫理や生命倫理の平等思想に基づいた人道主義の観点といった哲学的な思想がある。 メディア・ファッション著名人が行っていることから、あるいは他人と違うライフスタイルであることから、ベジタリアニズムを選択する人もいる。中にはベジタリアンであることを公言しながら、肉食を行っていると非難される人もいる。イギリスでは1984年から公共放送の英国放送協会(BBC)が「ベジタリアン・キッチン」というテレビ番組を放映したことでベジタリアンの実践者を増やした。 人がベジタリアニズムを選択する理由は上記のように様々である。原理主義的なベジタリアンの立場から、健康のために一時的に肉食を行う人を非難している場合もあるので注意が必要である。 日本「日本の獣肉食の歴史」も参照 日本におけるベジタリアニズムは以下のように変化している。 近代以前鎌倉時代以前の日本では仏教の僧侶は大乗仏教であるため肉食が認められなかったことから、しばしば近代以前の日本は菜食主義であったとみなされることがある。しかし、鎌倉仏教が肉食の厳格な禁止をやめたため、日本では、厳密な菜食はあくまで寺での修行においてのみの行われることとなるが、この環境で利用される精進料理は、大豆やその加工食品(豆腐やゆば)など、タンパク質豊富な豆類を積極的に取り入れるなどしており、また、他にも、野菜から木の実・キノコ類・山菜など、様々な食材を幅広く利用していたことから、経験的に栄養バランスをとろうと工夫した様子も窺える。 また皇室や貴族社会においても、仏教思想、稲作信仰、伝統的神道の穢れ的観点から、魚や鳥は食べても獣の肉を食べることはほとんどなかった。 なお、僧侶の食生活においては、托鉢で比較的栄養バランスのとれた料理を口にする機会が多かったり、あるいは、「四足の獣」を殺して食べることは戒めたが、足のない魚や、動物から省かれていた卵は食べられていた。また、三種の浄肉では、不殺生を旨とする僧侶も、寄付された肉類は食べてよいことになっている。 僧侶以外では、家畜の食用はほとんど行われず、山間部を除くと獣類の食用は少なかったが、魚類と鳥類の肉は食べられていただけでなく、家禽やウサギ、一部の地域では鯨類が食用とされ、内陸の地方では昆虫食も珍しくなかった。また、禅やその影響を受けた茶の湯(現在の茶道)において、精進料理の影響を受けて発達した懐石料理は、多少魚介類なども採り入れており、菜食主義からは遠ざかっている(他方、江戸時代に伝来した黄檗宗の影響を受けて発達した普茶料理は完全菜食主義的である)。このため、日本の伝統的な食生活がいわゆるペスクタリアン(上記)と同様の食生活だったとするのは厳密には誤りとなるが、日本農業が牧畜や養豚を欠いており、家畜を食用とする習慣がなかったという特殊事情から、普段はペスクタリアンに近い食生活を送っていた民は多かったと推測される。 日本の近代化と食文化の変化江戸時代後期から江戸などの都市部ではももんじ屋における肉食が一部で流行していたが、明治期に入ると、日本の食文化は西洋の食文化に栄養面で劣っており、日本人の体格を向上させ健康を促進し、ひいては国力を増強(富国強兵)するためには西洋的な食品、特に肉類や乳製品の摂取が不可欠であるという考えが主流となった。そして、この時期の文明開化の機運に乗って、仮名垣魯文の『安愚楽鍋』における「牛鍋(うしなべ)食はねば開化不進奴(ひらけぬやつ)」のくだりは広く人口に膾炙した。 これに従い、神道の宗教家の反対にもかかわらず明治天皇が肉を食べ、昭憲皇太后が牛乳を飲むなど、国家の元首自ら国民の模範となった。さらに、廃仏毀釈の影響も伴って日本人は家畜類も食用とするようになった。まだこの時代には魚類も肉も頻繁には食べられていなかった[53]。 現代日本における「菜食主義」のイメージ精進料理の思想では、「より高い精神性を獲得する(=精進する)ために、菜食を主体とした食事をとる」という面で、原義のベジタリアニズムに近いものを持つ。しかし上述の「菜食主義(者)」という訳語の誤った印象もあり、ベジタリアニズムは近代以降の日本において一種の健康ブーム的な側面が強調され、正確に理解されていない面もある。ひどい時にはただの偏食と同列に看做される場合さえある。 また、近代以前の日本においては思想・信条等の違いについて格別の意識を持たなかったため、食習慣の違いや食のタブーについても無頓着であることが多い。あるテレビ番組では、厳格なベジタリアンのインド人に、獣脂や肉エキスなどが含まれている日本のカレーを勧める場面があった。本人も気づいていないらしく、番組でそれ以上のコメントもなかったが、こういったことがトラブルの原因になることは現在も少なくない。 こと食のタブーに絡んでは、日本国内でこれら食の文化に無頓着な傾向は根強く、宗教的観念の希薄さにも関連付けて見る事もできる。違った文化の人達が国境を越えて交じり合うようになった国際化社会のなかで、このような傾向を警戒する識者も見られる。 その一方で、伝統的日本食はコメ・大豆・野菜を中心に魚類を配したものであり、宗教上のベジタリアンは存在したものの、欧米のように動物性タンパク質に偏った食生活への反省・反動から生じたベジタリアニズムを言い立てる必要が元からなかった以上、食のタブーを今更強調することには無理があるという意見も存在する。 健康ブームこの他、ダイエットのような美容・健康面での理由から菜食に邁進する者もいる。 著名なベジタリアン「著名なベジタリアンの一覧」を参照 脚注
関連項目
(Wikipedia英語版によるピースフードについての記事) 参考文献
外部リンクQuestions for article: |
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